ついに続・氷点の下巻を読み終えた。陽子が原罪とどう向き合うのか非常に興味があった。氷点を読み進めるうちに自信の身の内にも潜む罪を垣間見たのだ。陽子ほど潔癖に生きる人間すら思い悩むのだから俗に生きる自分は尚更だった。それで彼女はどうしたか。網走の流氷が作る奇跡的な風景に神の存在を見留めて贖罪を得たのだった。
そういう途方もない奇跡を目の当たりにしたときに得られる"何か"に赦されたような気持ちに自分も心当たりがあって、このエンディングはすごくわかる気がした。景色をきっかけにしてふと神託が降ってくるのだ。それで今まで悪くて仕方なかった相手も、憎む行為を醜いと自覚する自身も赦せるような、高次な存在になるときがたまにある。
しかし、陽子が得たのはもっと恒久的な確たるものだと思われた。自身の心のかたちを浮き彫りにしてきた人だけが得られる境地のように思った。