スカイツリーの足元でやっている幾原邦彦展に行った。監督作品の展示はもちろん、幾原監督の生い立ちやアマチュア時代の活動を知れる貴重な展示もあった。絵コンテがいくつかあったので眺めたが、あれを完成形のアニメーションを完全に想像しながら作画するのは難しそうだ。今まで見たことの無い動きや演出を作り上げる難しさを想う。一般的な作品に比べてイメージをすり合わせる工程で苦労しそうだ。どのようにしているのだろう。
ユリ熊嵐のキャラデザの資料も良かった。最近UIを勉強したから分かったけど、キャラデザ担当はデザインシステムを作る仕事だったんだな、と気付いた。キャラクタのスタイルガイドやコンポーネントライブラリのような資料があれば、作画のスキルがある人が応用して自身のカットのシーンで正しくキャラクタを描けるのだ。
見終わって浅草まで歩いた。さらざんまいの聖地巡礼をしにスカイツリーから吾妻橋を経由してカッパの像がある合羽橋まで歩く。途中で塩パンが美味いというパン屋に寄った。カッパの像の前で、今日の目的は全部達成したね、と話し合う。時間は未だ夕方だった。旧岩崎邸庭園に行こうと提案してみる。合羽橋の調理器具屋を冷やかしつつ田原町駅に向かい、そこから銀座線で上野広小路駅まで行って歩く。
旧岩崎邸庭園は立派だった。貴族の屋敷でよくある高台の上にあり、入り口からは見えない。坂を登りきるとパッと視界が開けて豪邸が顔を出すこの瞬間が大好きだ。外装が工事中だったのは残念。内装は少しイスラム風の装飾が取り入れられたアールデコスタイルのようだ。洋館は階段が良い。この階段を物憂げに降りてくる社長令嬢と下で待ち構えて嫌味を言う社長夫人を想像する。嗚呼、窮屈だわ!と恋に恋する社長令嬢は自由を求めて二階の窓から木に飛び移って家出をして云々、という話を想像するのが好きだ。なんの話だ。
洋館は背中に坂を下る。向かいの大通りは湯島天満宮だったので参って拝んだ。
時は18時であった。「今日は珍しく彼とご飯なの」と連れが言う。なんとなくそういう雰囲気だな、と思った。化粧がいつもと違う。御徒町で別れて池袋に戻る。一日連れ添った相手と夕飯を食べないで別れるというのは寂しさがあるのだな、と知る。